遊歩公園改造構想は立ち消えに

道路か公園か　軍配は道路に⁉

　「アイデア市長」と呼ばれた上田保氏（故人）の業績をたどって遊歩公園を訪ねました。前回の「大分まち歩き/アイデア市長の遺産⑤遊歩公園１」では、上田さんが設置した彫刻について見てみました（左のイラスト参照）。

　今回は遊歩公園の大改造計画について書こうと思います。結論を言えば遊歩公園を大きく変えようという動きが一時盛り上がったようですが、そのうち立ち消えになりました。

　1945（昭和20）年の敗戦からの復興を進めた上田さんは、焼け野原となった大分市中心部に色んな公園を造りました。その公園が木下敬之助市長の時代に一新されました。

　木下市長といえば、このブログの「大分まち歩き/アイデア市長の遺産③高崎山Ⅲ　存廃論議」に登場しています。この時は、木下市長は一時「高崎山自然動物園」の廃園も検討したという新聞記事を紹介しました。

　ウィキペディアをみると、木下氏は1991（平成３）年から2003（平成15）年まで３期12年市長を務めています。木下市政は敗戦・復興から半世紀の節目を迎える中で、新たな時代（21世紀）を見据えて、色んなものが見直される時期だったともいえそうです。

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　木下市長は就任１期目に市内中心部の「公園リフレッシュ事業」を打ち出しました。その第一弾が若竹公園でした。

　上の写真は「市報おおいた」の1994（平成６）年７月15日号です。市報には「公園リフレッシュ事業の第一弾として昨年６月から取り組んできた若竹公園の再整備工事が終了しました」と書いてあります。

　かつては文字通り「竹」の公園でしたが、今度は「水」をテーマにした公園に生まれ変わり、新名称も「ふないアクアパーク」に変更されたと、市報に説明がありました。

　木下市長は翌95（平成７）年度に「公園リフレッシュ事業第２弾」としてジャングル公園の再整備を行い、第３弾となった新しい若草公園は1998（平成10）年６月に完成します。

　そして、最後の仕上げとして遊歩公園の改造に動き出しました。

　1997（平成９）年５月１日の市報おおいたに掲載された討論会の詳報があります。この年の３月２日に「熱き心で今、激論　21世紀の贈物　遊歩公園」と題した討論会が開かれ、遊歩公園のあり方について、夢も含めて意見交換した、と市報に書いてあります。

　遊歩公園は大分都市計画道路「県庁前古国府線」にあります。両側に歩道（幅員３ｍ）と２車線の車道（幅員７ｍ）があり、真ん中の遊歩公園が幅10ｍだそうです。

　計算すると、道路の横幅は計30ｍになります。この幅30ｍをどう使うか、公園と道路をどう両立させるかが、議論の中心テーマとなりました。

　市報を見ると、公園を廃止し全面的に道路にすべきという意見もありますが、それは少数派のようです。基本は公園と道路の両立で、公園、道路のどちらを重視するかで意見が異なっています。

　木下市長は遊歩公園のリニュアルに意欲を燃やしていたようですが、任期中には実現しませんでした。その後も遊歩公園のあり方をめぐる議論はあったようですが、いつのまにか改造計画は立ち消えになっていました。

　それとともに遊歩公園を街の活性化に生かそうという発想も薄れていったように見えます。

　1997（平成９）年の市報にあった地図を見て気づきました。

　この地図が正確ならば、遊歩公園の焦げ茶色の四角で囲った部分がなくなったり、削られたりしているようです。

　道路の混雑緩和のために遊歩公園を縮小したようです。公園と道路、どちらを重視するか。1997（平成９）年の議論の行方は、最終的に「道路」に軍配が上がったということになります。

　ちょっと味のある、ユニークな公園だと思っていたので、少し残念です。

　　遊歩公園とその周辺には豊後府内（大分）の近世の繁栄を物語る彫刻が幾つかあります。キリスト教宣教師とともに入って来た西洋文化。それが府内で小さな花を咲かせました。公園の彫刻は大分が「西洋医術」「西洋劇」「西洋音楽」などの発祥の地であることを伝えています。

　しかし、「西洋との出会い」を丁寧に説明した案内文は日本語だけ。すぐ横の「大手公園」の表示板には日本語のほかに英語、中国語、ハングルの表記があるのに、と思うと、「遊歩公園は少し冷遇されているのではないか」と思ってしまいます。

　大分市は「南蛮文化発祥都市宣言」をしているのだそうです。インバウンドなどと言い、外国人旅行客を積極的に受け入れようということなら、大分の歴史の「目玉」を紹介する彫刻に英語の簡単な説明板を付けても良さそうですが。