6/09/2025

余話 ミカンとりんご 日本農業新聞より

ミカンとリンゴはどうなる?

記事と統計が示す危機的状況


 上の見出しは少し大げさかもしれません。日本農業新聞で気になる記事を2本見つけました。いずれも2025(令和7)年6月3日付です。

 一つはミカンの話。左の記事です。

 「ミカン初の60万トン割れ」という大きな見出しが出ています。

 記事は次のような書き出しで始まります。

 「2024年産のミカン生産量は前年比18%減の55万9600トンで、初めて60万トンを割ったことが農水省の作物統計で分かった」

 記事を読み進めるとまた数字があります。

 結果樹面積は前年比3%減の3万4500ヘクタール、出荷量は前年比17%減の51万900トンだった。

 結果樹面積、生産量、出荷量はいずれも、データのある1973(昭和48)年以降で過去最低となった。

 
 一方、リンゴの記事は右にあります。見出しは「リンゴ生産回復わずか」「過去最低前年並み」です。

 こちらも農水省の作物統計を基に書かれた記事です。

 記事の最初に、2024年産リンゴの生産量、出荷量はともに過去最低だった前年からの回復がわずかだったことが農水省の作物統計で分かった、と書いてあります。

 もう少し具体的に言うと、24年産リンゴの生産量は60万9200トン、出荷量は55万4900トンでいずれも前年比1%増だったそうです。

 前年の23年産はデータがある1973(昭和48)年以降では過去最低で、24年産は23年産に次ぐ過去2番目の低水準だった、と記事は書いています。

 「志手とミカン」については、このブログ「大分『志手』散歩」で何回か取り上げています。

 志手はかつては「ミカンの銘産地」として知られていました。そうしたことを2022(令和4)年9月から10月に「志手に残る農村風景 ミカン盛衰記」とのタイトルで6回に分けて書きました。

 例えば次のようなものです。「志手の残る農村風景 ミカン盛衰記①ミカンの銘産地・志手」(2022年9月29日公開)、「志手に残る農村風景 ミカン盛衰記➁栽植記念の石碑残る」(2022年9月30日公開)。

 そんなわけでミカンと聞くと他人事とは思えません。

 リンゴもこのブログ「大分『志手』散歩」の筆者にとってはなじみ深いものです。リンゴもミカンも昔は今のようには美味しくありませんでしたが、そんなリンゴやミカンを子どもの頃から食べてきました。

 馴染みのミカンやリンゴの生産が先細りになっていると聞くと心配になります。ミカンとリンゴの先行きは大丈夫でしょうか?

 ミカンの未来を案じつつ、次回のブログであらためて「志手とミカン」について少し書いてみたいと思います。

 その前に日本農業新聞の記事の基になった統計も紹介して、とりあえずこの回を終えようと思います。

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 まずはミカンの統計から紹介します。それが左の資料です。

 ミカンの収穫・出荷量が前年比で減少したのは、結果樹面積が減ったこともありますが、それよりもはるかに大きな理由が夏の高温です。

 左の資料には、高温による落果や日焼け果が発生した結果、10アール当たりの収量が1620キロと前年比で310キロ(16%)減少した、とありました。

 日本農業新聞によると、農水省は高温対策を前提に24年産ミカンの生産量を70万2000トンと見込んでいたそうです。

 しかし、夏の高温の長期化に加えてカメムシや鳥獣の被害もあって大幅な生産減、不作となったと記事は分析しています。
 
 一方、リンゴはどうでしょう。

 こちらも結果樹面積は減っていますが、10アール当たりの収量が1810キロで前年比60キロ増えて、収穫量も60万9200トンと前年比で5200トン増えました。

 前年比の増加率は10アール当たりの収量が3%増、収穫量は1%増だったと書いてあります。

 ただ、日本農業新聞に書いてあった通りで生産回復と言ってもわずかです。

 このブログ「大分『志手』散歩」の筆者は、リンゴの先行きはミカンよりもっと厳しいのではないかとの感想を持ちました。



 愛媛県のホームページに温州みかん・かんきつの生産量の推移という資料がありました(上の資料)。

 これを見ると、ミカンの生産量が減少を続けていることが分かります。ミカン生産のピークは1975(昭和50)年の366万トンとあります。2024(令和6)年産は約56万トンですから、最盛期の6分の1以下です。

 ミカンの方が危機的状況に見えますが、資料にはミカンの生産量の推移とは別のグラフがあります。それが「かんきつの生産量」です。

 ミカンもかんきつも同じではないか。そう思いましたが、ちょっと違うようです。かんきつの生産量のグラフの下に「みかん」と「中晩柑」というグラフがあります。

 中晩柑とはミカンよりも収穫や出荷が遅いもののようです。代表格はデコポン(不知火)でしょう。ポンカンなども中晩柑です。「かんきつ」とは中晩柑のことのようです。

 「ミカン」からデコポンなどの「中晩柑」に積極的に生産を切り替えた生産者、地域もあるようです。
愛媛県はその代表格でしょう。

 ミカンだけでなく、ミカンと中晩柑を合わせた「ミカン類」の生産ととらえると、一直線に減少を続けているとはいえないかもしれません。

 とはいえ愛媛県のグラフを見ると、「かんきつ」の生産量も頭打ち傾向にあるようです。

 ミカンだけでなく「ミカン類」全体として見ても、生産が増えていく状況にはなく、このまま減少・縮小傾向が続くと思えます。

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