4/04/2024

毘沙門堂今昔 番外編その2 図書館で読める市場直次郎の著作

 市場氏の著作は何冊あるか?

図書館の蔵書を検索すると


 明治・大正・昭和・平成を生きた郷土史家の市場直次郎についてちょっと調べたことを、このブログ「大分『志手』散歩」の前回(「毘沙門堂今昔 番外編 郷土史家・市場直次郎」)で報告しました。

 前回の最後に「市場直次郎の名前とその功績がもう少し大分でも知られていてもいいのではと思います」と書きました。ただ、そういうだけでは仕方ないので、市場直次郎の足跡、業績を知るための手掛かりを提供しようと思いました。

 それが図書館が所蔵する市場直次郎の著作リストです。大分県立図書館と大分市民図書館のそれぞれのウェブサイトで「市場直次郎」と入れて検索してみました
 
 大分市民図書館には1冊ありました。

 市民図書館にあったのは市場直次郎著「郷土趣味雑話」。1932(昭和7)年に「大分あづさ会」から出版されました。

 ラジオ放送で市場氏が語ったものを本にまとめたようです。誰かが市民図書館に寄贈したのでしょうか。「豊後伝説集」や「豊後方言集」ではなく、「郷土趣味雑話」の1冊だったことが、このブログ「大分『志手』散歩」の筆者には予想外のことでした。

 大分県立図書館はどうでしょう。こちらは結構ありました。

 大分県立第一高等女学校(現大分上野丘高校)時代の豊後伝説集、豊後方言集、豊府紀聞のほか、大分から離れた後の著作もあります。

 「豊国筑紫路の伝説」(1973年)「筑紫路の絵馬」(1974年)「九州・沖縄地方の民具」(1983年)「ふるさと扇面譜」(1987年、冒頭の写真)「西日本民俗文化考説」(1988年)などです。


 県立図書館(写真上)の蔵書リストには佐賀県文化財調査報告書の第9集(1960年)、第12集(1963年)もありました。

 それぞれ市場直次郎の調査報告があります。第9集には「肥前における田楽の伝承-川久保田楽を中心として」、第12集には「竹崎の鬼祭」について書いています。

 大分県立図書館には市場直次郎関連の資料は20冊ほどあるようです。県立図書館には市場直次郎の著作が思ったより多い。これがこのブログの筆者の素直な感想でした。

 市場直次郎の著作と足跡について、もう少し詳しく見てみようと思います。この先は「続きを読む」をクリックして下さい。

 さて、「市場直次郎」のキーワードで出てきた大分県立図書館の書籍を列記しておきます。

 出版年が新しい順に
 ①「豊府紀聞」市場直次郎編 日名子健二 2008年
 ②「豊府紀聞上・下」十時英司編     1993年
 ③「西日本民俗文化考説」市場直次郎   1988年
 ④「ふるさと扇面譜」市場直次郎     1987年
 ⑤「九州・沖縄地方の民具」市場直次郎ほか1983年
 ⑥「筑紫路の絵馬」市場直次郎      1974年
 ⑦「豊国筑紫路の伝説」市場直次郎    1973年
 ⑧「日本の民俗41」(佐賀)市場直次郎  1972年
 ⑨「豊後府内百姓一揆資料」       1969年
      市場直次郎、十時英司(共)編
 ⓾「佐賀県文化財報告書第12集」     1963年
 ⑪「佐賀県文化財報告書第9集」     1960年
 ⑫「豊後方言集 第3輯」市場直次郎ほか 1936年
 ⑬大分県立第一高等女学校校友会誌第37号 1935年
 ⑭「豊後方言集 第1輯」市場直次郎ほか 1933年
 ⑮「あづさ1号」「あづさ2号」高山虔三編
 ⑯「郷土趣味雑話」市場直次郎      1932年
 ⑰大分県立第一高等女学校校友会誌第32号~第38号
 ⑱豊後国大分郡府内城市街圖       1930年
 ⑲「豊後古蹟研究」第1~8冊
 ⑳「豊後伝説集」市場直次郎編      
 ㉑「豊後伝説集全」郷土史蹟伝説研究会編

 
 もう一つ、冒頭に写真で紹介しました西日本文化協会から出版された「ふるさと扇面譜」について少し触れておきます。
 
 
 
 「ふるさと扇面譜」は、当初は西日本文化協会の協会誌で連載され、好評を博したそうです。その証拠は「続・ふるさと扇面譜」、さらに「続々」「新選」「追選」「補説」と連載が続き、合計51回に及んだことからうかがえます。

 内容は、江戸や明治時代の文人たちとかれらが描いた扇面の書画について市場直次郎が解説を加えるという形式になっています。

 この本の結びで、市場直次郎は長三洲筆の詩画の扇面に魅せられたことがきっかけとなって、この一風変わった画文集を編する気になった、と書いています。

 ちなみに長三洲は日田の学者長梅外の長男で、広瀬淡窓の咸宜園などで学んだそうです。この「ふるさと扇面譜」には、このブログ「大分『志手』散歩」の筆者が知らない近世・近代の文人たちが数多く登場します。




 【追記】雑誌「まつり」の1998(平成10)年7月に「市場直次郎先生追悼」の記事があります。この記事のことは前回の「毘沙門堂今昔 番外編 郷土史家・市場直次郎」で少し紹介しました。

 筆者は「佛坂勝男」という人で、この記事の中に「市場直次郎先生著述目録」(写真下)があります。
 

 赤い棒線を引いた右側が大分で、左側が佐賀に移ってからのものです。

 目録によると、佐賀での最初の著作は1937(昭和12)年2月に肥前史談会の「肥前史談」に発表した「鵜殿石仏の信仰系統」。同じ年の9月の「肥前史談」に「肥前白髭神社の田楽についての考察」を書いています。

 この後ほぼ13年のブランクがあって、1950(昭和25)年1月の佐賀県郷土研究会の「郷土研究創刊号」に「農耕儀礼と文化」が掲載されているそうです。

 この後は継続的に調査報告が出されており、「市場直次郎先生追悼」にある著述目録では、1979(昭和54)年11月に佐賀民俗学会の「佐賀民俗学」3号に寄せた「大村神社御田歌追説」が最後になっています。

 市場直次郎は晩年は居を福岡市に移したそうですから、佐賀での調査研究活動は1979年までだったということでしょう。


 

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